♡祐雫の初恋♡
なるほど……
祐雫は、避暑地で、慶志朗と出逢って、恋をしたらしい。
「そのようなことはございません」
優祐の後ろで祐雫は、小さな声で否定する。
(恋をすると祐雫でも、淑(しと)やかになるのですね)
優祐は、背中に隠れている祐雫が、何時になく可愛く思えた。
何度か会ったことのある嵩愿家の御曹司である慶志朗は、
異端児的な要素を持ち合わせていながら、
経済界の重鎮たちに孫のように可愛がられている存在である。
大学二回生で、すでに嵩愿グループの取締役の肩書きを持っていた。
はじめて晩餐会に参会した時に、祖父・啓祐(けいすけ)から、
いの一番に紹介されたのが慶志朗で、
経済界の若手の中でも、有望視されていることを実感した。