♡祐雫の初恋♡
薫子は、孫娘の祐雫の初恋を通して、
若かりし頃の自身の初恋を想い出していた。
夫の啓祐は、兄・香太朗の学友で、よく東野家へ遊びに来ていた。
時折、お見かけするうちに、恋心が芽生えていた。
その後、父親同士が意気投合して、
二人を許婚と公表した時には、
恥ずかしくて、啓祐に顔を向けられなかったけれど、
密かに喜びを感じていたものだった。
薫子は、初恋は、なかなか成就できないものだという迷信を
見事に克服したのであった。
一人息子の光祐と運命的に引き取った祐里も、
試練を乗り越えて、初恋を成就している。
薫子は、祐雫の初恋が成就するしないよりも、
初恋にこころ焦がす年頃を迎えたことへの嬉しさを感じていた。