♡祐雫の初恋♡

 慶志朗を慰めようとする祐雫の気持ちがじんわりと伝わり、

 その真剣なまなざしは、慶志朗の胸に美しい肖像として刻み込まれた。


(初恋と真実の愛……)


 考えたことがない言葉だった。



 大学入学祝の祝賀会で、

 父からは、麗華を許嫁候補だと紹介され、

 そのすぐ後に、母からは、幼馴染の琳子を許嫁に推された。


 どちらも類希なる良家の子女で、

 嵩愿家に引けを取らない縁組であった。


 麗華は、その名の通り絢爛豪華な才女で、

 一緒にいて同等に光り輝くことができ、退屈しなかった。


 反対に琳子は、慎ましく心配りが行き届いた淑女で、

 一緒にいて寛げる存在だった。


 どちらも許嫁としては非の打ちどころがなかった。


 しかし、愛情を感じるかといえば、疑問が残る。


 その疑問が心に引っ掛かり、

 麗華と琳子とは、エスコートするときに、

 手を添えるだけの清い付き合いのままであった。


< 94 / 201 >

この作品をシェア

pagetop