奏でる場所~SecretMelody~
俺と奏は病室を静かに出て、ベンチへ向かった。



「とりあえず…一件落着か…。」



「そーやなっ!よかったよかった。」



その時、――ブブブッと振動がベンチから伝わった。




マナーモードにしている奏のケータイだ。



「ん?メール?あ、光山愛奈だ。」



「え?光山!?なんで?」



どうやら、奏は宙の病院を教えるために、光山と連絡先を交換したらしい。



…決闘の申し込みとか?



「え――っと?今日、見舞いに行きたいから、病院の休憩所で待ち合わせしたいって…。」



――――――――休憩…所…?



え…?



やめろ…やめてくれ…。



休憩所だけは…。



「陽輝?どーかした?」



「いや…。待ち合わせの場所、変えられへんかな…?」



「何でだ?一番分かりやすいし、調度いいじゃないか?」



「そう…やねんけど…。」



昔の記憶がフラッシュバックする…。



『―――――くんが!!倒れたって…――――――』



『え?―――――――――』



俺の顔がみるみる青ざめていくのが分かる。



ピロン♪



また、奏のケータイがなる。




「あ、もう着いたって!…陽輝?」



「…大丈夫や…。いこか…。」



「うん!!」



あかん…。



息が荒くなって…き…た。




「ゲホッ…ゴホゴホッ…」



「陽輝!?大丈夫か!?」



「ゲホッ…ゴホゴホゴホ…ヒューヒュ…」



喋られへん…。



あ、やばい…



意識ももうろうとしてきた。



「陽輝っ!?」



奏が叫んだ瞬間、ちょうど俺の担当医、本田先生が通りかかる。



「…!?陽輝!!?ちょ…姉ちゃんどいて!!」



奏をどかし、先生はPHSで



「宮原さん!陽輝が病院内で発作起こした!酷いみたいやから、すぐ治療するで!対応して!」



と連絡を入れる。



「そこの、女の子!友達に報告しといたって。多分すぐには治まらへんと思うから!!」



「え…あ、はい!!」



奏は宙の元に走っていき、俺は間もなく来たストレッチャーに乗せられ、処置室に運ばれた。



「陽輝ー。すぐ楽になるからなー。落ちつけよー…」



治療中、マスクをつけられても咳はなかなか治まらない。



こんな酷い発作、久しぶりかも…。



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