奏でる場所~SecretMelody~
~奏side~



はー…。



さっきはビックリしたなー…



いきなり立花に“どう想っている”って言われて…



はぁ…。




ところで奏は今、楽器店にいる。



お目当てのものを手に入れ、少しだけなら…と楽器に目を向けた。



ピアノを見るつもりなのに。



バイオリンにどうしても目が奪われる。




駄目だ…。



もう、バイオリンは諦めるって決めたのに。



皆を悲しませないように…。



“奏”が意志を継ぐって…決めたのに…。



そんな気持ちとは裏腹に、無意識にバイオリンのガラスケースに近づく足。



ふるえる手でガラスケースに触れた。



その時。




「あの…。」



「…!!え?」



急に知らない人男の人に話しかけられ、急いで手を引っ込める。



「あ、すいません、驚かしてしまって…。」



「い…いえ。」



「あの…、僕、こういう者です。」



そうして名刺をだす男。



どうやら、音楽関係の記者らしい。



「それで…奏になにか??」



「…奏さん…やっぱり、奏さんですね!“天才ピアニスト、江原 音葉”の娘さん!!」



え…っ。




母の事知ってるんだ。




やめて…母の話をしないで…。



「まぁ、元“ピアニスト”ですよね!もう弾けなくなりましたし…。



一時は話題になりましたよー。



せっかく“天才ピアニスト”の娘は“天才バイオリニスト”で有名だったのに。」



“天才バイオリニスト”…それは“私”の事だ。



だけど、お母さんがピアノを弾けなくなったから…



“奏”はバイオリンを諦めた。



奏が黙っていると男は話を続けた。



「もうバイオリンは嫌いになったんですね?



なにしろ、きっかけでもあるわけだし。」



やめて…。



そのきっかけがあったとしても…



“私”はバイオリンを嫌いになんてなれない。



でも、“奏”はその感情を押し殺して来た。



今更…思い出させないで…。



奏は走って外に飛び出した。



男はまだ追ってくる。



立花はトイレにいったらしく、見当たらない。



やだ…。



夢中で走っていると、ドンッ!!



誰かにぶつかった。



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