奏でる場所~SecretMelody~
~颯side~



「…っん…。」



陽輝がうっすらと目を開ける。



「陽輝っ!!」



「…そ…う…?」



よかった…。



俺は女かと思うほど強く握りしめていた陽輝の手を離す。



「ごめん…。陽輝…。奏の所為で…。」



一緒にいた奏ちゃんも声をかける。



「颯達の所為ちゃうよ…。俺が、弱いだけや。」



…ははっ



…ホント…陽輝にはかなわねーなぁー。



全て俺が悪いのに。



勝ってに怒った事も。



奏ちゃんを勝手に連れ出した事も。



奏ちゃんをほったらかしてトイレに行っていた事も。



全て…



俺の勝手な行動だ。



なのにお前は笑って許してくれる。



さすがだよ。



…そういう所も魅力なんだろうな。







しゃーねー…



譲ってやるよ。



ずっと好きだったけど。



お前よりきっと好きって気持ちはデカイけど。



2人は心から必要としてるって痛いほど感じさせられたから。



お前に譲ってやる。



俺は諦めるよ。



かなわねぇもん。



俺は2人きりにしてやるために、



「お大事にな」



そう一言呟いて病室を出た。



――――陽輝…奏ちゃん…



幸せに…なれよ…。
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