奏でる場所~SecretMelody~
~奏side~


立花…行っちゃった…。



そろそろ…言わないと…。



“私”の真実を。



「なぁ陽輝…。奏の話…聞いてくれる…?」



「ん?…ええよ。」



「あの…な…。今日の男の人…音楽関係の人で…当時の事、よく、知ってたんだ。」



「当時のことって?」



奏はドキドキしながら、話を始めた。



「奏、4歳からずっと、バイオリンをやっていたんだ。



前にもいったけど、母は天才ピアニストで奏もピアノをやると思われていたんだけど…



母に連れられて行ったオーケストラで見た、バイオリンが忘れられなくて。



周りは皆、反対した。



せっかくのピアノんの才能があるのにって。



でも、母だけは賛成してくれたんだ。



“奏の好きなことをやりなさい”って。



本当に嬉しかった。



そして、バイオリンを始めたんだ。



楽しくて、楽しくて…



気付いたら、大人の人を通り越して、



“天才バイオリニスト”なんて言われてた。



だけど…12歳の時。



コンクールの日に見に来るはずだった母がなぜかこなかったんだ。



せっかく優勝したのにって。



母は最後の一瞬だけ来た。



理由をきいても『ごめんね』としか言わなくて。



奏は怒ってホールを飛び出した。



そしたら、後ろでもの凄い大きな音がしたんだ。



奏は驚いて振りかった。



――するとそこには、たくさんのバイオリンの山があった。



そしてその中に血まみれの母が倒れていたんだ。



たくさんのケースごとのバイオリンの下敷きになって。



奏は放心状態でつったってた。



――――そしたら病院に着いていて…



母は脳を負傷して…。



右半分をまひしちゃってて…。



それで…



ピアノが弾けなくなった。



奏のせいなんだ。



“天才ピアニスト”と言われて世界で活躍していた母の…



――…未来を奪った。」
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