奏でる場所~SecretMelody~
話ていると涙がにじんで来た。



こわい…こわいよ。



陽輝は1言も話さずに話を聞いてくれた。



そして、ずっと手を握ってくれている。



「大丈夫…大丈夫や。…続き…聞かせて?」



「うん…。



それから…なんだ。



自分の事“奏”って呼ぶようになったの…。



“私”…バイオリンが大好きでおとなしい“私”は封印しようって。



皆を…悲しませないように。



母から、ピアノの才能を受け継いだ、元気な少女“奏”として生きて行こうって思った。



あの曲…奏がいつも音楽室で弾いていたあの曲は、母から教わったの。



数ある曲の中で、一番バイオリンとピアノのハーモニーが綺麗な曲。…」



「そう…やったんや…。



ごめん…俺なんも知らずに前、“バイオリン弾いて”なんて言うてもーて…。」



「ううん…。大丈夫。でも…忘れられないんだ。



今でも“私”はバイオリンが大好きだ。



奏でたい。



でも、許されないんだ…。



母の未来を奪った…バイオリンを…。



母のために奏でてきた“奏”が奏でるなんて…。」



全てを話終えた奏を陽輝はふわっと抱きしめたくれた。



温かくて…安心する…



「大丈夫や…奏。俺が…いつかお前を自由にしたる。



奏にバイオリンを弾かせたるから…。」



陽輝…っ。



「うん…。ありがとう…。」



やっぱり陽輝は奏の運命の人だ…。



たまらなく…愛おしい。



「…話、聞いてくれてありがとう。



じゃ、奏、そろそろ帰るな。寮がしまっちゃうから…。」



「あぁ…。んな、またな。」



「うん。明日も…くるから。」



「おう。」



奏は陽輝の病室を後にした。
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