奏でる場所~SecretMelody~
~宙side~


「陽輝…は…?」



奏は名前プレートも確認している。



「……ハルくんはね…。大阪に…帰った…。」



「…え……?…嘘…。」



「嘘…だろっ!!?アイツ…大阪に行くなんて一度も…っ!!」



皆が驚くのは無理もない。



ハルくんは皆に何も言わずにここを去った。



真実を知っているのはあたしだけ。



って言っても、あたしが盗み聞きしちゃったからなんだけどね…。



退院する前日、あたしはハルくんの病室に話に行こうとしていた。



そしたら、ハルくんの呟く声が聞こえて…。



話をきいた。



誰にも言わないつもりだったって。



出来るだけ皆とかかわらないまま行くって。



奏と別れるつもりだって事も。



本当の事は奏には言えないけど。



信じてあげて?ハルくんを。



離れても2人の“絆”は消えないハズ。



そうでしょ?



「ハルくんは、ハルくんなりに一生懸命考えたんだよ。



皆がハルくんを忘れるように。」



「忘れるわけ…ねーだろ…。」



「ハッキリ言って、ハルくんの様態は最悪だった。



日に日に発作も増えて…。



命の危機もあったんだ。



だから…。



両親の居る大阪に帰ったの。」



「そっ…か…。まぁ、大丈夫だ!!離れていても連絡は取れるし!」



颯くんが空気を和らげようと笑う。



でも…。



「無理…だよ…。ハルくん…。もう連絡は…とらないって…。」



「っ!!どうして!!?」



「だから…その…。」



“2度と会えない”



ハルくんはそう言ってた。



それは…何を意味しているの?



3人は黙ったあたしの言葉を理解したみたい。



“会わない”じゃなくて“会えない”



ハルくんは1人で、戦っているんだ…。







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