奏でる場所~SecretMelody~
「ゲホッ!ゴホッゴホッゴホッ!」



いきなりの事態に驚き、息を詰め、また発作が出始める。



「こっちはいいから先にハルくんを早く病院に!!」



宙に言われ、先生と颯の肩を借り、俺は車へ向かった。



―――――――――――――――



消毒のツーンと鼻につく香り。



小さな子の泣き声。



咳の音。



シーンと静まりかえる病院は悲しく、苦しい音で包まれていた。



「古田様~。古田陽輝様~診療室1へお入りください。」



――ガラッ…



扉を開けて中に入るとそこにいたのは俺の大阪に居た時からの担当医と看護婦さん。




俺が大阪に来た理由は実は、この担当医の本田 陸(ほんだ りく)先生と看護婦、宮原 美穂(みやはら みほ)さんが、この東京の病院に転勤となったので俺もついてきた。



「で、陽輝。お前またムリしたな?」



「…してへんし。」



「嘘つけ。何やったんや?」



「…サッカー。」



「…サッカー!?!?お前アホか!死にたいんか!?自殺行為やろーが!」



「ごめん…。」



「どんなけやったん?」



「…1ゲーム。」



俺が、そう言うと先生が頭を抱え込む。



「はぁー…。とりあえず診察するから熱計れ!」



宮原さんが笑顔で体温計を渡してくる。



俺は頭を下げ、体温計を借り、脇にはさんで…数分後。



――ピピピッ!!



んー、音なったな…。



脇に挟んでいた体温計を取り出し、数字を確認すると。



…は?高っ!!



こりゃ、ヤバいって。



先生に見せたらあかん…って



「あっ!!」



俺の反応を無視して体温計の表示をみる先生。



「陽輝。お前よー座ってられるな…。約40度やで?」



…先に見たから知ってるわ。



「…はぁー…じゃ、聴診するから服あげろ。」



「ん。」



先生が聴診器をあてる。



「はい。吸ってー吐いてー…ん、いいよ。」
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