きみに会える場所~空の上ホテル~
「お前って、本当に使えねえな」

レイが呆れ顔で言った。

「ごめんなさい」

私は下を向いたまま謝った。

ここは、奈美ばあちゃんが働いていた調理室。試しに料理の腕前を見せてもらおうと言われたものの、パンをトーストするぐらいしかやったことなくて、それを自己申告したところ。

カナタさんがとりなしてくれる。

「まあまあ、おいおい覚えればいいよ。でもとりあえずコックは無理だね」

せめて名誉挽回に付け加える。

「食器洗いには自信があります。それと洗濯と掃除」

サキさんもにっこりする。

「じゃあ、その三つは美緒ちゃんに任せるわ。問題は、誰がコックになるかよね」

レイが耳の辺りをかいた。

「普通に考えればサキじゃねーの? 女なんだし」

サキさんは腕組みをしてじろりとレイをにらんだ。

「女か男かは関係ない。カナタだってレイだって料理はできるでしょ」

レイがふん、と鼻息を荒くした。

「人に出せるほどの料理を作る自信はない」

カナタさんもやれやれと首を振った。

「そんなこと威張ってどうするのさ。・・・・・・面倒だから、じゃんけんで決めようよ。支配人とフロントとコック。やってみてどうしても無理そうなら代わればいいんだしさ」

サキさんもうなずいた。

「そうね。ここでごちゃごちゃ押し付けあうよりいいかもね」

レイも真剣なまなざしでサキさんとカナタさんを見た。

「うらみっこなし、だからな」

三人はよし、とうなずくといっせいにこぶしを振った。

「最初はグー、じゃんけんぽん!」

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