きみに会える場所~空の上ホテル~
「ちょっと、そこのあなた!」

棒立ちになった。声のした方におそるおそる顔を向けると、美しい着物姿の女性がこっちを見ていた。

大女優の林原ゆり子さんだった。

「な、何でしょうか」

「このホテル、売店はないのかしら?」

「・・・・・・さ、さあ」

林原ゆり子さんの美しい眉がきっ、と上がった。
「さあ?!」

「あっ、あの、すみません。私、従業員じゃないんです。見学者みたいなもので・・・・・・」

怒っている人は苦手だなあ。必要以上にぺこぺこしてしまう。

「あら、そうなの」
林原ゆり子さんはあっさり引き下がった。

よかったー。私は胸をなでおろした。ほっとすると言葉がどんどん出てくる。

「あの、私、これからフロントに行くところなんですけど、よかったら一緒に行きませんか? きっと売店のこととかくわしく教えてくれると思いますよ」

林原ゆり子さんは、少し考えてから言った。

「また今度にするわ」

そのまま、ふらっと歩いていった。

マ、マイペースな人だな・・・・・・。

私は手にきちんとお届け物を持っていることを確認すると、早歩きでフロントを目指した。
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