きみに会える場所~空の上ホテル~
困っていたサキさんの役に立てたから、私は戻ってこられたんだな。

そっか。そういうことなんだな。

誰かの役に立てたことも、自分の推理が間違っていなかったことも、それはそれでうれしいけど、でも、なんか微妙。

私は前かがみになってひざのばんそうこうを眺めた。

何の変哲もない、ごく普通のばんそうこうだけど、これは「空の上ホテル」が夢じゃないっていう証拠。

・・・・・・ファーストキスが夢じゃなかった証拠。

顔がかあっと熱くなった。前の座席の背もたれにひたいをつけて顔を伏せた。

目を閉じてレイの姿を思い描いた。あの鋭いまなざしを、広い背中を、ほっそりした指先を、忘れてしまわないように。

ああ、私に絵心があればなあ。今この瞬間にスケッチブックにレイの姿を描きとめておけるのに。

もう、レイには会えないのかな。

もっとレイのこと見ていたかった。
もっとレイのこと知りたかった。

涙がぽたりと落ちた。



・・・・・・誰かを助けようなんて思わなければよかったのかな。そしたら、ずっとあそこにいられたのかな。

だけど、それって現実の自分はどうなっちゃうんだろう?ずっとずっと夢から覚めずに眠り続けるのかな。

父さんや母さんはどんな気持ちがするだろう。悲しむかな。・・・・・・それとも怒るかな。



眠り続けるのは、やっぱりちょっと怖い。



だけど、レイに会えないのは、すごく・・・・・・すごく悲しい。

あんなにぎくしゃくしないで、もっと普通にすればよかった。

レイにもう一度会いたいなあ。

泣いたり恋しく思ったりしているうちに、まぶたがだんだん重くなり、私は顔を伏せたまま眠りに落ちていった。





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