祈りの月
第1章~研究所
〜プロローグ〜



 惑星ティルシアは、地球から遠く離れた所にある、人類の移住惑星である。

 今から、約150年前、地球政府は、人類が移住可能な惑星を文字通り血眼になって探していた。

 その頃の地球は、人類が住むには厳しい環境になりつつあり、人口減少も止まることなく続いていた。

 幸い、めざましく進歩していた宇宙開発事業のおかげで、人類は惑星をいくつか発見するに至った。

 その一つが ――『惑星ティルシア』――。

 地球に良く似た性質を持ったその星には、何よりも『原始の海』と呼ばれる生態系豊かな美しい海が広がっていた。

 惑星の大きさは、地球とほぼ同じだが、陸地面積は地球よりは少なく、大部分が海であった。

 すでに地球からは失われた、美しい自然――。

 それが、惑星ティルシアにはあったのだ。

 ティルシアに住む、『美しい人々』と呼ばれるティルア人は、全盛期の地球全人口の半分にも満たず、美しい自然もそのままに、平和に暮らしていた。



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