祈りの月
第3章~過去
 朝、起きたとき。
 
・・・昨夜の出来事は、夢のように思えた。

 レイアの姿は、本当に幻のように消えてしまったのだ。

 ただ砂浜に残った小さな足跡だけが、レイアの存在を証明していた。

 レイアの言った、『地球の海が恋しい』という言葉が、強く印象に残って、カイの耳にこびりついて離れなかった。

『―地球は、故郷でしょう?』

 ・・・本当に、恋しいと思うのか。

 いや、自分は恋しいと、懐かしいと思えるのだろうか。

 見たこともない、自分たちの、故郷・・・・・・。

 その地に降り立てば、何か感じるのか―。

 カイには、自信がなかった。

 地球へ、帰る。

(もし、帰ったら・・・・・・)

 どうなるのだろう。

 それが、カイにはどうも実感できない。

 地球という場所に居る自分が、想像することができないのだ。

 自分と、地球をつなぐ糸はなにもない。

 地球へ降りたつ、その瞬間を考えると、カイは恐怖すら感じるのだった・・・・・・。
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