祈りの月
第4章~接近
「なんか、ぼんやりしてるなぁ。・・・・・・何かあったのか?」

 船の操縦をしながら、ドゥリーが心配そうに言う。

「いや、別になんでもない」

「ふうん?」

 いかにも納得いかない風に言うドゥリーに、カイは小さくため息をついた。

「・・・・・・今朝、サリーシャに会ったよ」

彼とは長い付き合いだ。さすがに隠せないらしい・・・・・・観念して口を開く。

「――ああ、そうなんだ。なるほど」 

 二人は、調査ポイントへ向け、船上にいた。

 ――快晴だ。

 ティルシアの海は、底が見渡せるほど透き通っている。波も穏やかで、見下ろせば海中の魚影が見ることができる。底に広がる色鮮やかなサンゴ礁が、水彩画のように海底を彩っている。

「彼女、元気だったか?」

 ドゥリーとサリーシャとカイの三人は、学生時代の同級生だ。

 だから、カイがサリーシャに対して微妙な気持ちでいるのを、ドゥリーは良く知っている。

「ああ。本当に地球に帰るのかって訊かれたよ」

「寂しいんだろ。・・・・・・彼女、お前のこと好きだからな」

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