祈りの月
 ドゥリーの話では。

 彼も昔は、カイと同じように思っていたのだという。

 しかし――。

「・・・・・・『契約』が必要らしいんだ」

「契約? 月とか?」

 突飛な話に、カイは眉を寄せたが、ドゥリーは真剣な顔で肯定する。

「そう、契約だ。祈るだけじゃない。差し出すものが必要らしい。何が必要かはしらないけどさ、願いを叶えてもらうのも、ただじゃない、ってことだろ・・・・・・」

「―――」

 カイは考え込んだ。

 人の姿になる代わりに、レイアは何を引き換えにしたのだろうか。

 そんなに小さな代償ではきっとないはず。

「気になるな・・・・・・」

 ドゥリーも同じことを考えたのだろう、ぽつりと呟く。

「夜、会うんだろ? 聞いてみろよ」

「そうだな」

 カイは頷いた。
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