祈りの月
 研究室へ戻ろうと足を向けながら、カイはレイアの言葉をひとつひとつ思い出していた。

 西のルキア大陸から、ラディア大陸まで、なぜ長い距離を旅してきたのか。

 カイに会いにきたと言う彼女の話を信じるにしても、それだけが理由ではないだろう。

(それに・・・・・・)

 寂しかったと、彼女は言っていた・・・・・・。

 あれは。

(そういう、意味なのか?)

 この広い海にたった独りなのか、彼女は。

「―」

 ふと、カイは足を止めると踵を返し早足で出入り口へと向かった。

 研究所のドアをくぐると、太陽の光が目に突き刺さるように眩しい。

 カイは海岸へと続く階段を駆け下りると、数人の人が集まっている辺りへと足を向け
た。

 手をかざして、眩しさに目を細めながら波打ち際を見る。見物人から少し離れた海面で、レイアの影が見えた。

 カイは波打ち際まで駆け寄ると、そのまま濡れるのも構わずに海へ入っていった。

 ばしゃばしゃと波をかき分けるように進んで行く。

 服が水分を吸って重くなったが、そんなのは気にしていられない。
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