祈りの月
「レイア!」

 しばらく進んだところで歩を止めると、カイは声を張り上げた。

 キラキラと陽光を反射して宝石のように輝く青い波間から、カイの呼びかけに答えてレイアが泳いでくる。

 腰まで海につかったカイの周りを、旋回する。レイアのつるりとした皮膚が、水面の輝きをまとった。

 黒いつぶらな眼差しが、カイに向けられる。

 カイはゆったりと泳ぐレイアの滑らかな背中に軽く手で触れた。

 頭の中に、レイアの不審そうな声が響く。

『カイ・・・・・・何かあったの?』

 瞳がカイを心配そうに眺める。

『変だよ』

「――あまり昼間は海岸に近づかない方がいい」

『急に、どうして?』

「いいから、あまり人に姿を見せるな!」

 怒鳴るまでいかないが、カイはかなり強い口調で言った。

 ぱしゃんと水音がして、一瞬、レイアがカイのそばから離れる。

『どうしたの・・・・・・?』

 怯えたようにカイの様子をうかがうレイアの姿に、カイは我に返る。
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