祈りの月
 カイは落ち着くために呼吸を整えてから、口を開いた。

「――。とにかく、夜になったらまた来るから、沖へ行っててくれないか。・・・・・・ここは人が多い」

 きちんと確認しなければならない。

 もう遅いかもしれないが、レイアが不用意に人の目に付くのは良くない気がした。

 もっと早く気が付けば良かったと後悔の念が押し寄せた。

「頼む」

『・・・・・・分かったわ』

 レイアが了解し、沖の方へ頭を向けて泳ぎ始めた。

 カイはその姿を見ながら、クロス博士から言われたことをじっとかみ締める。

 博士は、『捕獲で一致した』と言ったのだ。
 
 海洋研究の専門家たちが出した結論。

 それはレイアがこの惑星最後のイルカなのだと、海では生きられないのだ、という答えを導き出しているような気がした・・・・・・。
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