祈りの月
 やはりという思いと、信じたくない思いが、渦を巻くように交錯する。

「君はそれじゃ・・・独りなのか・・・?」

 絞り出すようなカイの問いかけに、レイアが無言で首を縦に振った。

 この広い『原始の海』で、独りきり。

 それはどのような孤独なのだろうか――カイには想像もつかなかった。

「そんな・・・独りだなんて・・・家族は・・・?」

「死んだわ。・・・もうずっと前だけど。それからはひとりになっちゃった・・・」

 レイアは、口元にうっすらと笑みを刻んだが、それもすぐに消えてしまう。

 それから、自分自身に言い聞かせるように呟く。

「仕方ないもの。・・・・・・それに海には、たくさん魚たちもいるし寂しくなかったから、大丈夫」

「―」

 その言葉が嘘だとカイは知っている。

 嘘なら、なぜ、そんなに寂しい瞳をしているのか。

 なぜ、そんなに遠い目で海を見つめるのか――。

 レイアの黒い瞳が美しいのは、内包している悲しみの色のせいなのかもしれない。

 だから、誰よりも美しいと感じるのか。
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