祈りの月
 会いたいと思う。

 ずっとそばにいたい。

 それは叶わない願いだと分かっていても、レイアはそう望まずにはいられない。

 しかし、ずっと共に在ることなど、出来るはずもなかった。

 カイは、人で。

 レイアは海に属する生き物だ。――住む世界が違いすぎる。

 月の輝く時間でなければ、レイアはカイと同等に話をすることさえできないのだ。

 それに、月との『契約』には時間に限りがある――。

 まして、願いを叶えてもらう代わりに、月から提示された約束事を守らなければどうなるか、レイアはちゃんと分かっている。

 でも、約束を守ったら、――もう、カイに会えない。

(カイ・・・)

 そばにいたい―・・・。

 もう、独りはいやだった。それなのに。月との約束を守っても、守らなくても、カイには会えなくなってしまう・・・・・・。

 どうすれば良いのか、いくら考えても分からない。

 思うだけで涙があふれる。

 それはすぐに海水と同化してしまったけれど。

 レイアは、ゆったりとした海の中で、涙を流し続けていた――。
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