祈りの月
第8章~決断
カイがレイアを連れてきたのは、海岸近くに建てられた広い敷地を持つ工場だった。

 使われなくなって、年数がたっているのだろう、整備されていない土地は荒れ果てた姿を月光の下に晒している。

 あちらこちらに伸びきった雑草が生い茂り、雑然とした雰囲気をかもしだしていた。

「足場、悪いから気をつけて」

 先を歩くカイが差し出した手を取って、レイアがありがとうと小さく呟く。

「もう、ずっと使われてないみたい」

薄闇の中をレイアは見渡した。

「そう、閉鎖されて・・・・・・12、3年ってとこかな。俺もそれ以来ここには来ていない」

 もう、誰からも忘れられたように佇む工場。

 金属にはサビが見られ、高く伸びた建物の先端がむなしく空を指している。

 そして、深く地面に差し込まれた配管と、海中へと伸びている何本もの、太い管。

「カイ、ここは、なに?」

 訝しげにレイアが問う。

 彼女には、なぜ、カイが自分をここへ誘ったのか、まったく検討がつかなかった。
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