ハッピーエンドの描き方
Chapter 2
2-1
あの日から、あの男とは頻繁に会うようになった。
レンタルビデオ店に立ち寄ると、二回に一回の割合で顔を合わせる。
いつも新品の洋服を着て、新品のスニーカーを履いているような人。
それでも、スニーカーはいつも決まってオールスター。
サングラスを取ってくれたことはまだない。
こだわりの強い人なのだろうか。
「その人、会ってみたいな」
丸いカフェテーブルに身を乗り出し、真っ直ぐに私を見つめてくるのは、中学時代の友人。
彼女の名前は植野結衣。
彼女は決して派手な子では無い。
かわいい、というよりも、どこかふわふわした印象のある子。
髪の毛は癖毛なのか、わざとカールさせているのか分からないが、緩いウェーブのかかった髪を後ろで束ねている。
化粧もある程度はしているけど、ほとんどスッピンに近い。
身長は私より小柄で、不思議の国のアリスに出てきそうな女の子。
結衣とは高校も大学も違うけれど、時々こうして顔を合わせる仲。
雑談をするなら彼女が最高の相手だ。
飾らない彼女の全身からは、マイナスイオンが出ている気がする。
駅前のカフェに入りびたり、時には課題を、時にはただ雑談をするのが、結衣と出かけるときの定番コース。
今日も例外ではなかった。
「イケメンなんでしょ?」
「サングラスしてるから、顔は良く見えないんだ。
声は凄くかっこいい」
「で、いつも映画の感想を聞いてくるんだ?」