ハッピーエンドの描き方
2-2
自宅に帰った私は、藍川に渡されたカードを睨みつけていた。
自室で一人、ベッドの上に座ってカードを睨みつける女。
いくら見たって何か変わるわけでもないし、私の悩みを解決してくれるわけでもない。
しかも、彼は全く知らない人だ。
藍川に似てはいたけれど、その手の詐欺かもしれない。
インターネットで住所検索をしてみると、事務所の連絡先と住所は合っていた。
しかし、インターネットで出てくるくらいだから、いくらでも偽造のカードは作れる。
散々迷った挙句、私はカードを握りしめたまま携帯電話を掴んだ。
電話をする先は、もちろん結衣のところ。
もう夜の十時を過ぎた遅い時間だけれども、ひょっとしたら出てくれるかもしれない。
発着信記録のトップにあった結衣の番号をプッシュする。
三回コールしたくらいで結衣が電話に出た。
「どうしたの?」
「こんな遅い時間に電話しちゃってごめんね。
今、時間大丈夫かな?」
「テレビ見てただけだから大丈夫だよ。
ちょっと待ってね」
電話の向こうから、結衣が走って階段を上がる音が聞こえる。
きっと、二階の優衣の部屋に移動してくれているのだろう。
しばらくして、柔らかい結衣の声が聞こえてきた。
「あの人のことでしょう?」
「えっ!?」
結衣が軽く笑う声が聞こえてきた。
「やっぱりそうだと思った」
結衣の勘の良さは人並みじゃない。
私でさえ、時々恐怖を覚えるくらいだ。