ハッピーエンドの描き方
思い返してみれば、これまでまともに理解できた話の内容が思い当たらない。
であれば、この講義の単位を取る必要性がどこにあろうか。
しかも、これはただの秋期講習科目である。
単位が取れれば御の字だが、取れなくてもさほど被害はない。
すなわち、履修中止の決定である。
こんな講義も耐えられないのか、と情けなく思う自分がどこかにいるのだが、もとはと言えば眠くなるような教授がいけないのだ。
全ての責任を教授に押し付けることに決めて、私は講堂をあとにした。
春休み中にもかかわらず、キャンパスの中は賑やかだ。
みんなが数名のグループ、またはカップルになって歩いている。
その中を、一人、速足で歩いていく。
大学の中を一人で歩いてはいけないというルールはない。
胸を張っていいはずなのだが、どうも肩身が狭い。
ガラス張りの図書館棟の横を通り過ぎる時、反射して私の姿が映った。
その姿を見て、夢の中だとは言え、王子と結婚するようなシチュエーションを考えた私が情けなくなった。
……とんだ身の程知らず。
デブ、ではない。
しかし、決して細めでもない。
健康診断では、ギリギリのところで標準の位置にいる。
身長は百六十センチ。
体重は……、忘れた。
寒さ対策のためと服を重ね着し、さらにコートを着たことから、私はかなり着ぶくれをしていた。
まるで、だるま。
カーキ色のコートを着ていたが、これが赤だったら本当にダルマにしか見えないだろう。