ハッピーエンドの描き方
近眼で、黒縁メガネをかけている。

粗雑に束ねた髪は頭の上でお団子になっているが、短い毛が抜けて無残なことになっていた。

彼氏いない歴は年齢と同じ。

しかも、飛んだ間抜け。

少し動けば転ぶ。

カバンの中身をぶちまけるのも日常茶飯事。

そんな私を見て、物を拾うのを手伝ってくれる王子はいない。

駅で前から来た人と動きがあってしまって、なかなか前に進めないなんてこともあるが、そこで笑ってくれる人には会ったこともない。

大抵はオヤジ。

しかも、さもイライラしたような視線を送りつけてきて、挙句の果てには小さく舌打ちをするやつもいる。

私も悪いとは思うが、舌打ちはいくらなんでも腹が立つ。

残念なことに、運命の出会い的シチュエーションは、無い。

小説や映画の主人公はいとも簡単に出会い、当然のようにハッピーエンドを迎えるが、私には当てはまらないようだ。

映画は好きだが、どうもこのハッピーエンドというやつは軽視されているような気がする。

たった二時間足らずで、本当に幸せになるまでの道筋が描けるものだろうか。

小説でも、映画の脚本でも、書くのは勝手だし、いくらでもできることだと思う。

ただ、実生活においてのハッピーエンドの描き方を知っている人は、どれくらいいるのだろう。

私だって、幸せじゃないとは言わないが、ときめくような、明るい未来があるとも思えない。

無難に生きる毎日がつまらないとさえ感じるようにもなってきた。
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