アンブレラ☂
私は春涅さんの方を見て小さく微笑んだ。
「春涅さん、あなたはこの秋の紅葉を
どんな気持ちで描いたのですか?」
春涅さんは私の方を見ると
小さく頷いて、答えた。
「大切な家族や友人を思って描きました。
私も紅葉の様に強く美しくなりたい…。」
と自信に溢れた瞳をこちらに向けて。
「春涅さん…素晴らしいわ。」
私はそう言って又、
作り笑いをして美術室を出た。
秋も皐月も、慌てて私の後を駆けてきた。
私がお金で買えないもの、
それは美的センスだったんだ。