籠の中
「冗談よ。冗談」
「なるほど。君は冗談がうまい」
 僕はお世辞でもなく事実を述べた。
「人が死ねということは、そういう知らない世界がたくさん蠢くのかもしれないわね」
 彼女はそう言い、『レクイエム第八曲 涙の日』の演奏が開始された。
 両親の魂は安らかな眠りと共に空高くへと舞い上がったことだろう。大学卒業を控え、両親が亡くなり、比較的早めに孤独への階段を昇っている気がした。
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