籠の中
 彼女と会うことは一週間に一度から、月に一度という間隔になっていった。
 会えば身体を重ねるという、僕の性欲だけを満たす存在になっていた。保険金が入り、お金には困らなかった。ホテルで皆の憧れの的をあらゆる体位で犯す優越感をいつしか抱いていた。もちろん勉強に対する熱が冷めていた。どうしても司法試験に合格したいという情熱は、もう、僕には残されていなかった。二十七歳の春風が舞う季節だった。
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