籠の中
 そうか。僕には妹がいたのだ。その存在すら、記憶すら忘れてる自分がいた。
 テーブルに湯気が漂っていた。その匂いが僕の忘れかけていた胃袋まで到達した。食欲が戻った気がした。口に含んでみる。だが、不快な気分になり便所に駆け込んで嘔吐した。特に吐くものもなく酸だけが充満した。
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