籠の中
「希は、なぜ死ななければならなかったのだろう」
 僕は彼女を見た。一瞬彼女は目を細くし僕を見た。
「やはり変わってしまった、あなたが原因ではないでしょうか」
 舌で唇を舐めた。水を飲み、
「姉は妊娠していました。しかし、あなたが自信を失い、元気を失っているのを側にいて感じたはずです。『私は、支えてあげられなかった』そう妹の私にボソリと漏らしたこともあります。姉のそんな姿は始めてでした。イジメられて塞ぎ込んでいた私にいつも笑顔を向けて、色々な音楽を流しながら『必ず良いことがあるから』と毎日言ってくれました。それなのに、それなのに、姉は事故で死にました。酒気帯び運転をしていたトラックドライバーに姉は惹かれました。即死だったそうです。その時に新たな命も死にました」
 彼女の目から波が滝のように流れた。激しくも強く。
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