籠の中
 そこで会話を中断し、彼女の唇にキスをした。一回では終わらなかった。二回、三回と、餅つきのように交互に仕返した。そうして僕らはまた体を重ねた。ときに激しく、ときにソフトに、リンゴ・スターのドラミングのように緩急をつけた。
 三十年も生きていて、もしかしたらこの時が一番楽しく、虹色の世界だったのかもしれない。
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