籠の中
 僕は目が覚めた。ベッドに彼女の存在はなかった。そして彼女の存在を仄めかすものもなかった。昨夜の成れの果てが部屋には広がっていた。生臭さとアルコールの匂いが充満していた。シャワーを浴び、愛液を洗い落とす、全て洗い落とす。もう、変わるときがきたのかもしれない。濡れた髪を掻き分け、湯気が立ち昇る浴室の天井を見上げた。
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