籠の中
 もう一つの変化がある。妹が結婚することになった。僕は嬉しい反面、複雑だった。家族が妹一人ということもあるが、結婚が決まった日に妹と交わった。
「それは定められたことなの」妹はその一言だけ発し、全裸になり渇いた僕の心を濡らした。
 たしかに、『定められたこと』なのかもしれない。
 僕は妹を、少なからず性的対象として見ていた可能性がある。自分のことなのに断定は難しい。それでも希が消え、鬱屈したものを内面に潜ませ、生きるという事に嫌気がさした僕にとって妹の存在はでかかった。それはたしかだ。ときにビートルズを聴き、ときにクラシック音楽を聴き、それらを聴き抱き合った。二人して果てた後、妹が「お別れね」と言った。事実そうなのだろう。妹も別の道へ歩みだした。
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