籠の中
 「人違いだと思いますが」
 僕は愛想よく答えた。
「高津さんですよね」
 女は尚も食い下がる。
 タカツ、僕はタカツなのだろうか。いや、違う。タカツのどの文字にも抵触していないし被ってもいない。それにタカツなる人物に間違えられたこともない。だが、今間違えられている。どうしたものか僕は逡巡した。
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