籠の中
交通事故だった。セダンの古びたカローラに乗っていた両親は仲睦まじく伊豆へ旅行に出かけていた。その帰り道、対向車線をはみ出たトラックが両親のカローラに激突した。即死だった。担当した警察官が言っていた。それでも僕ら兄妹は泣かなかった。妹に至っては今もそうだが、感情が読み取れなかった。当時は十四歳という年齢だっただけに、溢れる感情を爆発してもいい歳頃だが、そんなことはなかった。むしろそれ以降、感情がないように見受けられる。