籠の中
「彼氏いるのか」
 僕は唐突に、普段聞かないようなことを妹に尋ねた。
「いないよ」
「いないのか」
「うん。言い寄ってくる人は多いけど」
 それはそうだろう。兄の僕から見ても妹は魅力的に見える。薄い栗毛色のミディアムヘアー、澄んだ目、ぷりっとした唇、少し陰のある雰囲気。決してでしゃばらず、自分の世界を持っている。性欲に溢れている高校生という年代なら尚更ほっとかないはずだ。
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