籠の中
 商店街に辿り着いた。 後は直進するだけだ。ゆったりとした歩みで遅れた分をここで取り戻さなければならない。腕時計を確認する。八時三十五分にはタイムカードを押したい。僕はいつもその時刻に押している。一ヶ月、タイムカードがその数字だけになったとき、いい知れぬ優越感を覚える。
朝の殺風景な商店街を通過し十字路に差し掛かった。右斜めにTSUTAYAがあり、左斜めに銀行がある。信号が青おに変わり直進する。また商店街だ。通過したと思った商店街がさらに出現した。そこは先程の商店街と違い、蕎麦屋があり携帯ショップがあり、品揃え豊富なディスカウントショップが立ち並んでいる。
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