籠の中
 エレベーターに乗り、チンという音と共に扉が開いた。静かだった。そこには人が存在しないかのように。それもそのはずだった。社員証兼カードキーをカード挿入口に差し込み鍵がカチッと開いた。僕はオフィスに入った。そこには誰もいなく、そしてデスクもなく、電話もなく、書類もなく、パソコンもなく、電話もなかった。上着を掛けるハンガーさえも。そう、そこは無人だった。 
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