籠の中
「なぜ、僕だけには事実が知らされてないのでしょう」
 僕は強気に訊いた。
「それは、君にだけ給料が支払えないからだ」
「支払えない」僕は思わず反復した。
「そうなんだ。君はまだ新人ということもあり、もちろんそんな理由で納得はできないと思うが、払えないんだ。もう俺には何も残っていないんだ」
 元社長は、本性を表し叫んだ。電話越しに聞こえる限り半狂乱になっているようだ。
< 57 / 203 >

この作品をシェア

pagetop