籠の中
 「給料は結構です」
 僕はそれだけ伝えた。
「俺は、どうしたらいい。路頭に迷うのか。先が見えないんだ。光が、希望が、未来が」
 ここまで来ると見苦しい。自分の傲慢な事業展開が失敗に終わり、先が見えないだ、と言われても僕の心には響かない。そもそも金という亡者に取り憑かれた人間は、こういう結末が待っているのかもしれない。
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