籠の中
 僕は冷徹なのだろうか。いや、そうではない。僕には心の拠り所がなくなっていた。友は離れた。自信も失った。恋人さえも失った。失うものが多すぎた。金がなくなったぐらい、それが何だというのだ。アルバイトでもすればいい。積み上げてきた生活水準を落としたくないだけではないか、金というものにしか楽しみを見出せないだけではないだろうか。僕はこういうのを嫌う。激しく嫌う。
< 61 / 203 >

この作品をシェア

pagetop