籠の中
 「ビールって美味しいね」
 彼女は屈託のない笑顔を僕に向けた。
「疲れてるときは尚更うまい」
「うまい」
 彼女は反復した。
「仕事はどう?」
 僕は訊いた。
「楽しいよ。人生経験豊富な人に囲まれてるし、私仕事やってますから、っていうオーラを放ってる人もいるし、もちろん魅力的な人もいる」
「仕事やってますオーラ?」
 僕は、もう一本缶ビールを開けた。泡がジュワジュワと噴出した。それを舌先で舐めた。
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