籠の中
「うん。そそくさと動き回ったり、あれもこれも手をつけて、結局中途半端な人ってこと」
 彼女もまた、缶ビールを一本開けた。同じく泡が弾けた。
「それはつまり要領が悪い」
「そう、要領が悪い」
 僕らは赤ら顔をして見つめ合いケタケタと笑った。そして自然とキスをした。ほのかなビールの香りと香水の匂いが、彼女から漂った。
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