籠の中
 僕は、わさびが効いた寿司をもう一口食べた。今度は涙の一滴もでなかった。慣れというのは恐ろしい。何事においても。
「それは言えてるわね。夜のあなたも好きだけど昼のあなたも好きよ」
「昼と夜」
「太陽と月」
 彼女は僕に続いた。
「なにもかもが二面性で溢れてるわね」
 そっと彼女はCDを取出した。コンポを探しているようだ。
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