籠の中
「そうだよ。正確には母が父にプレゼントしたものだけど。詳しくはわからないけどバレンタインデーにプレゼントしたんじゃなかったかな。コンポにしようとしたみたいなんだけど、あの人はラジカセのが似合ってる。って母が言ってたよ」
「その辺のセンスが、素敵よね。あなたのお母さん。綺麗で、知的で、なにより花を愛してる」
 彼女の鋭い感性が僕の母親を褒め称えた。
「どちらも真面目だった。だから僕も勉強に明け暮れた。でも少なからずプレッシャーを感じていた」
「あなたも真面目だったってことね。じゃないとプレッシャーは感じないわ」
「なるほど。そういうことか」
「そうよ」
 僕は、再生ボタンを押した。音が流れた。
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