精霊たちの王冠《王国編》
「カルス、駄目!!何処へ行くの!?」
泣きそうな顔で必死に縋り付くリアナを安心させるようにカルスはいつも通りの優しい微笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、リアナ。
少し様子を見てくるだけだから」
「駄目……駄目よ!
もしカルスに何かあったらっ………」
「大丈夫、俺が父上から厳しい訓練を受けているのは知っているだろう?
それに、まだそうだと決まったわけじゃない。
もしかしたら村のおじさん達が大物が獲れて馬鹿騒ぎしているだけかもしれないし」
カルスはそう言うが、それが願望でしかないという事をここにいる三人共分かっていた。
聞き違えるはずがない、領主邸が襲われた時から幾度となく聞いてきた、助けを求める悲鳴と断末魔の叫び。
風に乗って僅かに香る鉄の匂い。
間違えるはずがないのだ…………。