精霊たちの王冠《王国編》
「駄目………」
カルスの服を掴んで離さないリアナの手を、リゼルが後ろから外させる。
リアナは直ぐに掴み直そうとしたが、一瞬カルスの動きの方が早く、リアナの手を擦り抜けて村へと走り去った。
「いやっ、行かないで、カルス!
リゼル、離してぇぇっ!!」
後を追おうとするが、リゼルに羽交い締めにされ止められる。
リアナは抜け出そうと力一杯暴れるが、身長差も体格差もあるリゼル相手ではびくともしない。
「リアナ、落ち着け!
カルスなら大丈夫だ、村には親父だっているんだから安心しろ」
「おじ様………」
(そうだ、おじ様。
お父様がおじ様は今まで負け無しで右に出る者はいないって仰ってた。
おじ様が一緒なんだから大丈夫よね………きっと)
領主邸が襲撃を受けてから、ガルーシャの人間離れした強さを幾度となく目の当たりにしてきた為、ガルーシャの存在は僅かにリアナの中の恐怖感を和らげた。
それでもやはり胸を渦巻く不安は拭えない。
リアナはただ、皆の無事を祈る事しか出来なかった。