精霊たちの王冠《王国編》
木漏れ日が差し込む緑に囲まれた森の中で、剣が重なり合う高い音が辺りに響き渡る。
剣を打ち合っているのは、赤毛にひげを生やした体格のいい初老の男性と茶髪の若い青年。
そのすぐそばの切り株ではそんな2人の打ち合いを藍色の髪を後ろで結んだ青年が見物していた。
一見、年の若い青年が優勢かと思いきや、始終戦いの主導を握っているのは初老の男性の方だ。
段々と青年の顔が苦しげになってきたその時、少女の元気な声が聞こえてきた。
「おーい、みんなー」
その声に青年は一瞬気を取られ、その隙を男性は見逃さず、蹴りつける。
腹部を蹴られた青年はそのまま数メートル吹っ飛び、木に背中を打ち付け、うめき声を上げてうずくまった。
「ぐうっ」
「カルス!」
「うわっ!大丈夫か!?」
カルスと呼ばれた青年に、先ほど呼びかけた少女と切り株にいた藍色の髪の青年が慌てて駆け寄る。
「隙を見せるのが悪いのだ、バカ息子!
よし!次はリゼル、来い!」
初老の男性、カルスの父親ガルーシャは、次に藍色の髪の青年リゼルに狙いを定めた。
しかし、当のリゼルは物凄く嫌そうに顔を歪めた。
「ええ!俺はいいよ。ってかさ、もういい年なんだから、頑張り過ぎは体に良くないって。
だから、ちょっと休憩しようぜ、俺腹減ったし~」
「年とはなんだ、軟弱者め!!私はまだまだ若い者には負けんぞ!」
リゼルのその言葉に、ガルーシャは持っていた剣を振り回しながら、「まだまだ現役だー!」と言いながら動ける事をアピールする。